AI・テクノロジースライド自動生成

python-pptxでAIスライド自動生成|数式もデザインも崩さない

社内研修・営業提案・勉強会の資料を毎週のように作っていて、「章ごとにデザインが少しずつ崩れる」「数式やグラフだけ手作業で貼り直す」「1本作るのに1時間以上かかる」——そんな悩みを持ったことはないでしょうか。

私はこの設計を、院試対策の輪読資料やゼミ発表スライドで検証したうえで、python-pptx を使ってAIにスライドを自動生成させる仕組みとして組み立てました。同じ考え方は研修資料や提案資料の自動化にもそのまま使えます。テキスト・数式・画像の3要素をルール化してしまえば、章が変わってもデザインは崩れず、1本あたりの作業時間は数分まで縮みます。

この記事でわかること

  • スライド自動生成を「デザインの正典化」から始める理由
  • テキスト・数式・画像を別々の部品として扱う設計
  • TeX数式をパワポに崩さず入れる具体的な方法(コード例つき)
  • この仕組みを研修資料・提案資料の自動化に転用する考え方

この記事の対象者

  • 研修資料・提案資料・輪読資料を繰り返し作っていて、外注や自動化を検討している方
  • 数式やグラフ入りスライドをPowerPointで手作業編集して消耗している方
  • AIにスライド作成を任せたいが、デザインの崩れが不安な方

スライドが毎回崩れる原因は「その場でデザインを決めている」こと

AIにスライドを作らせると、多くの場合こうなります。1章目は紺色の見出しだったのに、3章目はいつの間にか青になっている。フォントサイズも微妙にバラバラ。これはAIがスライドを作るたびに、ゼロからデザインを判断しているためです。

解決策はシンプルで、デザインを「毎回考えるもの」から「固定して参照するもの」に変えることです。具体的には、色・フォント・余白・図形の座標をすべて数値で固定した「正典(せいてん)」を1つ作り、以降の全スライドはそれを機械的に読み込むだけにします。

要素固定する値の例
配色見出し=深紺(#1a2744)、本文=グレー(#333333)、アクセント=金(#c9a227)
フォント見出し28pt太字/本文18pt/注釈14pt、游ゴシック系で統一
余白・座標タイトル位置・本文開始位置をcmで固定(例: 上端1.2cm、左端1.5cm)
図形数式ボックスの角丸半径・枠線の太さも数値で固定

この正典を最初の1〜2枚(第1章分)で確定させてしまえば、以降は「同じ寸法・同じ色を使う」という指示だけで、AIは章が変わっても迷わず同じデザインを再現できます。


スライドの中身は「文字」「数式」「画像」の3種類しかない

資料に何を入れるか迷ったときは、要素を3種類に分解すると整理しやすくなります。

  1. 文字 — 見出し・箇条書き・要約。ネイティブのテキストボックスとして入れる(あとからPowerPoint側でも編集できるようにするため)
  2. 数式 — TeX(LaTeX記法)で書き、画像として合成してから貼り込む
  3. 画像 — 図解・グラフ・スクリーンショット

この3つを混在させず、それぞれ別の処理パイプラインで扱うのがポイントです。特に数式は、文字として扱おうとすると事故が起きやすい部分なので、次の章で詳しく説明します。


数式を「なんとなく似た文字」で誤魔化さない

スライドに数式を入れるとき、やってしまいがちな失敗が「Unicode文字での近似」です。例えば α1\alpha_1 を書きたいときに、コピーしやすいからと α₁(ギリシャ文字+下付き風の記号)で代用してしまうケースです。

一見似ていますが、これは本物の下付き文字ではなく別の記号です。フォントが変わると表示が崩れたり、コピー先で文字化けしたりします。数式を含むスライドを量産するなら、最初からこの近似を禁止ルールにしておくべきです。

実務での対処は次の流れです。

  1. 数式は必ず TeX 記法($...$$$...$$)で下書きする
  2. matplotlib や PIL を使って、その TeX を画像としてレンダリングする
  3. python-pptx で、その画像を本文の中の「数式が入る位置」に正確な座標で貼り込む
  4. 周囲の文字はネイティブテキストのまま残す(画像化するのは数式部分だけ)

こうすることで、Y(1)Y(0)Y^{(1)} - Y^{(0)} のような添字付き数式も、PowerPoint上でズレなく本物の見た目で表示できます。文字と数式の合成物ではなく、「文字ボックス+数式画像」を同じスライド上に正確な位置で重ねる、という考え方です。

実際のコードはシンプルです。matplotlibでTeXを画像化し、python-pptxで座標を指定して貼り込みます。

import matplotlib.pyplot as plt
from pptx.util import Cm

# 1. TeX数式を画像として書き出す
fig = plt.figure(figsize=(3, 0.6))
fig.text(0, 0, r"$Y^{(1)} - Y^{(0)}$", fontsize=28)
plt.axis("off")
fig.savefig("formula.png", transparent=True, bbox_inches="tight")

# 2. 固定した座標にそのまま貼り込む(数値は正典で決めた値)
slide.shapes.add_picture("formula.png", left=Cm(1.5), top=Cm(4.2))

ポイントは、数式の位置(left / top)を毎回目視で調整するのではなく、正典で決めた座標をそのまま使うことです。これで章が変わっても数式の位置がスライドごとにズレません。


構成づくりは「元ネタ→スライド」の変換ルールを先に決める

私の場合、資料の元ネタは Notion のノートページであることが多いです。ここで重要なのは、Notionの見出し構造をそのままスライドの章構成に対応させることです。

元ネタの単位スライドでの扱い
H1見出し章の扉スライド(1枚)
H2見出し本文スライドのタイトル
箇条書き本文の要点(3〜5行に収まるよう要約)
数式ブロック数式画像として本文中に配置
図・スクリーンショット右側または下部に画像として配置

この対応表を先に決めておくと、「このノートをスライドにして」という一言の指示だけで、構成に迷わず変換できます。逆にここを都度考えていると、章によって情報量にムラが出て、スライドが冗長になったり逆に説明不足になったりします。

この「先にルールを固定してからAIに任せる」という考え方自体は、資料作成に限りません。承認フローの設計など、AIに任せる範囲を決める話は AI出力の承認フローの作り方|表1枚で始める人の確認の入れどころ で扱っています。また、この記事の仕組みは Claude Code の「スキル」機能(手順をファイルに固定して呼び出す仕組み)の上に構築しています。スキルそのものの解説は Claude Codeのスキル(/skill)とは?カスタムコマンドを作って作業を自動化する方法 をご覧ください。


研修資料・提案資料の自動化にも同じ設計が使える

ここまでは輪読資料を例にしましたが、正典化する対象を入れ替えるだけで、社内研修資料や営業提案資料の自動化にも同じ設計がそのまま使えます。会社ロゴ・コーポレートカラー・図表の型を正典として固定し、元ネタをNotionや議事録に置き換えれば、担当者が変わっても同じ品質の資料が短時間で出力できます。

「毎回デザインがバラバラになる」「作れる人が1人しかいない」という状態は、資料作成が属人化しているサインです。ここを外注する場合も、発注要件は今回と同じ3点(固定する配色・座標の数値/数式や図表の扱い方/元ネタとスライドの対応ルール)を先に決めておくと、仕上がりのブレを防げます。


よくある質問

Q. PowerPointのテンプレート機能ではダメなのですか?

A. テンプレート(スライドマスター)は配色やフォントの器を用意してくれますが、「数式をどう画像化するか」「見出し構造をどう本文量に変換するか」という中身の変換ルールまでは面倒を見てくれません。python-pptxでの自動化は、器と中身の変換ルールの両方をコードとして固定できる点が異なります。

Q. 手作業より本当に速いのですか?

A. 私の場合、最初のデザイン正典を作る工程には1〜2時間かかりました。しかしそれが完成した後は、1章分(10〜15枚)のスライドが数分で出力できています。毎週・毎月資料が必要な場面ほど、初期投資を回収しやすくなります。

Q. 行列や積分のような複雑な数式でも対応できますか?

A. TeXで書ける数式であれば同じ手順で画像化できるため、複雑さそのものは問題になりません。ただし数式が大きくなるほど画像サイズも変わるため、正典の座標指定に「数式の大きさに応じた余白ルール」を1つ足しておくと安定します。


まとめ

  1. スライドのデザインは「毎回考える」のではなく「1回固定して参照する」仕組みにする
  2. 資料の中身は文字・数式・画像の3種類に分解し、別々のルールで処理する
  3. 数式はUnicode近似ではなくTeXで下書きし、画像として正確な座標に合成する
  4. 元ネタの見出し構造とスライド構成の対応表を先に決めておくと変換が安定する
  5. 初期投資(デザイン正典づくり)はかかるが、継続的な資料作成があるほど回収は早い

frural では、資料作成に限らず「毎回判断がブレる業務」を先にルール化してからAIに任せる設計をご一緒しています。研修資料・提案資料の自動化にご関心があれば、サービスの詳細はこちら、ご相談はお問い合わせからどうぞ。

「自社の資料をどこまでこの仕組みに乗せられるか知りたい」という段階でも構いません。遠慮なくお問い合わせください。実際の資料を見ながら、どこを正典化できるかを一緒に検討します。

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